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HR開始のチャイムが鳴るまで、あと数分。
ギリギリで遅刻を免れた私は、少し息を切らしながら、クラスの中を覗いた。
私が普段、早めに登校しているせいだろうか。
ほとんどの生徒が登校し、すでに各自の席に着いている光景が、なんだか今日は、いつもと違った景色に見える。
窓際に目をやると、梨花は、後ろを向いて、石田くんと何やら話をしていた。
間に合って良かった......
いつものように、後ろの扉から足を踏み入れた私は、スッと息を吸い、
「おはよう、吉岡くん」
見慣れた背中に声をかけた。
「......あ、やっと来た。珍しいね、広瀬がこんな......」
いつも通りの笑顔で私を迎えてくれた吉岡くんが、一瞬、軽く目を見開いたかと思うと、そのまま、ジッと私を見つめる。
......あれ。
「......えっと......」
そんな吉岡くんの姿に、私はちょっぴり戸惑いながら、その場に立ち尽くした。
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