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「あの......どうかした?」
「......」
無言のまま、静かに前を向いてしまった彼に、小さく首を傾げる。
私、何かしたかな......
モヤモヤした気持ちと不安を抱え、もう一度、彼に声をかけようとした時。
「......広瀬、見えてる」
絡めた両手を机に置いた吉岡くんは、俯いたまま言った。
「......え?......なにが......」
「......キスマーク」
「......」
......えっ、嘘っ......!
私は、前を向いている彼の後ろで、慌ててパッと首元に両手を当てた。
「あのっ......」
「家でさ」
「......えっ?」
「......鏡くらい、見てきなよ。女の子なんだからさ」
「......」
ドクン、と......私の心臓が大きく揺れる。
「ごめ......なさ......」
震える声で言い残した私は、そのまま逃げるように、クラスを飛び出した。
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