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*** 「......失礼しました」 カラカラと扉を閉めた瞬間、私の肩から、一気に力が抜けた。 首を左右に動かすと、コキ、と鈍い音が鳴る。 長かったなぁ...... 私は、クラスへと続く廊下を、ゆっくりと歩いた。 窓の外から「こらーっ!ちゃんとボール見ろー!」という、威勢の良い声が聞こえる。 下を覗くと、白いユニフォームを着た野球部の部員が、必死でボールを追いかけている姿が見えた。 誰もいない廊下を進み、クラスの後ろの扉に手をかける。 あ...... その瞬間、ビクッと私の動きが止まった。 見慣れた広い背中が、ゆっくりとこちらを振り返る。 そこには、今朝、私がクラスを飛び出してから一言も会話をしていなかった吉岡くんが、たった一人で残り、座っていた。 .
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