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しばしの間の後、何かを追い出すかのように小さく息を吐いた吉岡くんが、スッとその顔を上げる。
鞄に手を入れ、不意にクリームパンと紙パックのお茶を取り出した吉岡くんは、それらを、そっと私の机の上に置いた。
「え、あの......」
「泣かせちゃったお詫び」
「......え?」
「相澤から聞いた。昼休み、何も食べなかったんだろ?」
「......」
「ホントごめん」
「......」
やめて欲しい......
そんな何回も謝らなくていいのに......
「......あ、っていうか、お腹痛かったんだっけ」
戸惑っていた私の横で、吉岡くんが、少しだけいつもの意地悪な顔をする。
私の好きなものを、わざわざ買って来てくれた......
一人きりのクラスで、私に謝る為に、わざわざ待っててくれた......
それは、今の私の目の前を再び霞ませるのに、十分だった。
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