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一瞬、なんで絵里さんがここに......とは思ったものの、私が住んでいる狭い街では、ここが一番有名なファッションビルだ。
知り合いに会うのも珍しくないか......と思い直した私は、ちょっぴりの気まずさを抱えながら、目の前の冷めた紅茶を一口飲んだ。
「えー、っと......」
梨花の声に、ふと顔を向ける。
「あ、えっと......祐ちゃんの大学の友達の、絵里さん」
「あぁ、祐也くんの......」
私の言葉に、梨花は、納得したように頷いた。
「もぅ、ひどいじゃない、尚ちゃん」
「えっ?」
テーブルに身を乗り出しながら口を尖らせている絵里さんに、パチ、と目を瞬く。
「私と尚ちゃんはお友達でしょう?こういう時は、『私の友達』って紹介してくれてもいいんじゃない?」
「......あ、すみません......」
なんだかやたらと『友達』を強調した絵里さんは、
「もぅ......冗談よ。ホント尚ちゃんったら、かわいいんだから......」
お決まりの言葉を言うと、ふふっ、と笑った。
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