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やって来た店員にコーヒーを注文した絵里さんが「いいかしら?」と梨花に確認し、いつもの細いタバコに火を点ける。
彼女が息を吐き出すと、私達のテーブルの上に、静かに白い煙が舞った。
絵里さんから電話があったあの日以来、私は、彼女に会っていない。話してもいない。
彼女と電話番号を交換しただけで不機嫌になった祐ちゃんは、きっと、私が勝手に絵里さんと連絡を取ったりしたら、またいつものように怒るはず。
それを考えると、とてもじゃないけれど、絵里さんに電話をする勇気はなかった。
けれど......
日が経つにつれ、私は、あれはただの勘違いだったと自分に思い込ませるようになっていた。
ただ、絵里さんの彼氏の声が、祐ちゃんに似ていただけ......
そう自分に言い聞かせないと、私の心は、本当に折れてしまいそうだった。
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