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なんで、そんな事聞くの......
まさか、知ってるわけじゃ......
吉岡くんの、私を探るような瞳から、慌てて視線を逸らす。
「広瀬......答えて」
「......」
だから、なんで......
私は、顔の脇で布団を握る両手にギュッと力を入れた。
「答えて......?」
私を急かす彼の声に、咄嗟に布団の中で口角を上げる。
「あの、なんで?風邪引いて、ケガなんか、するわけないじゃない」
呆れたように言った私の頬が、ズキリと痛んだ。
視界に入る吉岡くんが、真っ直ぐに私を見つめているのがわかる。
吉岡くんは、私の言葉を無視し、
「あの人......来たんだろ?」
祐ちゃんが来た事を確信しているかのように、私に問いかけた。
「......来て、ないよ......」
「何もされてない?」
「会って......ないし......」
「危険な目に合わなかった?」
「......ホントに、来てないから......」
「怖い目に合ったりしてない?」
「だから......ホントに......」
噛み合わない会話を続けていると、
「嘘つくなよ」
吉岡くんの声が、少しだけ低くなる。
私の身体がピクッと反応し、目線をそっと彼に戻した。
吉岡くんは、怒ってはいなかったけれど、
「話してくれるまで、帰らないから」
小さな声で、キッパリと言った。
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