第一章

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「うっぷ……」 食べた直後に激しい運動は身体によろしくない。 俺は自らの手でそれを立証させた。 通学路の山道を自転車で絶賛爆走中。 自動でこの道登れないかな? エスカレーターみたいに。 「ほにゃちわわ~!!」 なんて考えていると突然後ろから声をかけられて肩を叩かれるもんだから 「バランスを崩した俺は運悪く茂みに落ち」 「てたまるかぁあぁあぁあ!!」 「おや。 生きてたのかい細倉彪悟(ほそくらひょうご)君?」 「俺をお前の都合で殺すな稲葉綾萌(いなばあやめ)さん?」 軽快なノリで挨拶してくるのは綾萌。 可愛い名前と可愛らしい容姿には似合わずお茶目というか 「美しい乙女だ」 「なんで分かるんだよ!?」 「あれ? まさかの図星?」 「ちげぇよッ!!」 とにかく面白い奴だ。 峠のてっぺんが見えてきた。 俺達はここで止まる。 「まだ来てないみたいだな」 「そろそろ来るんじゃない? あ、ほら。 おーい!」 そう言って綾萌の手を降る方向を見ると、確かに自転車を手で押してくる人が見える。 「時間ぴったし」 綾萌がそう言うと、 「僕は時間にルーズだからね」 なら普通は五分前行動だろ。 「僕にとってこの獣道はしんどいんだよ?」 そう言って自分が歩んできた道を指差す。 そこは明らかに舗装されていない……というか本当に道なのかどうなのかも分からない隙間がある。 「将誉君は毎日この坂道上り下りしてるもんね」 この小柄な少年、足和川将誉(あすわがわまさたか)はちょうどこの峠の下に家があって一般道を通ると遠回りになるからわざわざこの獣道を自転車を押して登校してる……らしい。 俺は歩いたことないから分からん。 「じゃあ歩いてみる?」 「時間がないから止めておく」 「ほら、早く行きましょ?」 そうだな。 ちなみに遅刻しそうなのはこの集合時間であって、決して学校に遅刻しそうではない。 後はのんびり行きゃあいいだろ。
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