チェーンソウ・チェーンソー!

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暫く伸びていた男だったが、ある時、彼の耳に装着された無線通信機がけたたましく鳴ると、男は表情を「物凄く」嫌そうにした。 やがてノイズの後、通信機から女の声が漏れてきた。 「坊や、仕事よ」 その女の声は異様な程淡白だった。声のトーンが一定で、まるで棒読みだ。ただ、響きは良い美声。 ちっ、と「坊や」は憎々しげに舌打ちしてベンチから立ち上がる。 「坊やじゃねえ、和希だ、和希。何回言ったら分かる。日本語分かるか? 記憶力の欠如? アルツハイマー? 」 「会話は成立してる。その事実さえあれば十分よ、坊や」 全身黒ずくめの男、和希はまるで親の仇と言わんばかりに辛辣な言葉を吐くが、相手の女性は相手にしていないようだった。 額に青筋浮かべながら、和希はフルフェイスのヘルメットを被り、公園の出口に向かう。 「お前ホント嫌な女。可愛げがねえよクソビッチ」 「あら、そのビッチの下着見て顔真っ赤にしてたじゃない」 「んぐっ……バ、バーカ! 」 ああ言えばこういう。不毛な言い争い。非生産的な会話は和希の沈黙で終了し、女が一方的に喋るようになった。 「話を戻すわ。エリア30でシキバン396が警官隊と交戦中、大至急現場に到達し目標を制圧しなさい。発砲、並びに特武解除は許可が出ているわ」 公園を出た和希は、路肩に停めた大型のバイクに股がる。かなりの大きさ、ゴツさで、何から何までアブノーマルなバイクだ。
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