母ちゃんと俺と、ときどきチカ。

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―― 目を開く。 白い天井、横を向けば白いシーツ。 ここは病院か。 涙がつーっと俺の頬を伝った。 結局「記憶」の中のエピソードはよく把握できないところが多かったけど、きっとあれは俺の核心の中の一つだ。 俺には6歳以降の記憶しかない。母ちゃんは地上6階から頭から落っこちたと聞いた。よくよく考えればそんなの即死亡。ホントに嘘なんてつけない人だ。俺の存在がなんなのかわからないけどそれを隠すのに母ちゃんは苦しい思いをしたはずだ。 『朱い目のうさぎは嫌いよ。でもね紅い瞳のうさぎはきらいじゃないわ。』 でもあの言葉は嘘じゃないと思う、今も昔も。 きっと後者の紅い瞳のうさぎとは、そして俺は改めて病室備えつけの洗面所の鏡に瞳を向ける。 紅い紅い瞳がこっちを向いている。しかし過去の自分と違って左目のみだ。色合いも過去と比べどことなく照る夕陽のような温かみを感じる。 「ホント俺ってなんなんだろう。てか、あの青白い光放ってた男って一体…」 口に出してみる案外間抜けな案件だなと思ったら笑えた。 「遥ッ!!!」
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