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病院のような消毒液の匂い、そして鉄、いや血の匂い。
「助けて、パパ」
小さな少女が恐怖に震えながらつぶやく。
彼女の傍らには白衣を着た男性が大量の血を流して倒れている。
少女はその白衣の男の裾を小さな手が白くなるまでつかんでいる。下唇をかんでいた彼女は問いかける。
「…なんで?」と。
そう少女が問いかけた瞬間、彼女の体が崩れ落ちた。
朱い目を持つ、人物の「力」によって。
いきなり目の前が暗闇になった。線香の香りがただよう。
そして声が聞こえる。
「朱い目のうさぎはきらいだよ」と。
どこか懐かしい声だった。
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