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数分後、彼らは戻ってきた。一様に真っ青な顔をしている。一人は今にも吐きそうだった。
「申し上げます。屋敷の中の隠し扉の奥に《紅-クリムゾン-》の拠点がありました」
「中はどうなっていたんだ?」
ごくりと報告していた警備兵は唾を飲み込んだ。
「中は、………血の海でした」
現場を思い出したのだろう。耐え切れなくなった、今にも吐きそうだった一人が激しく嘔吐した。仲間が介抱する。
ハミルトンは驚いた。
ここには警備隊の中でも精鋭を選んで連れて来ている。みなそれなりに凄惨な現場も見て来ている。中でも今嘔吐し、仲間に介抱されている彼は警備兵の中でも豪胆なことで知られる。
思い出したのか、顔色がみるみる悪くなっていく。それでも彼は報告を続けた。
「基地の中にいた者は、全て事切れておりました。
死因は急所を鋭い刃物のようなもので刺されたことによる失血かと思われます。そして、」
と彼は言葉を切った。
「死体の中から《紅-クリムゾン-》の大部分の幹部と《紅-クリムゾン-》総統カイン・クリムゾンを発見いたしました」
ざわっと空気が動いた。視線が少女に集まる。彼女は笑っていた。それはそれは悲愴に凄絶に。まるで、泣いているかのようだった。
ザーザーと降りしきる雨が深い哀しみと絶望を奏でていた。
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