その幕開け

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◆◇◆◇◆◇ 「あれからずっとこの天気です」  ハミルトンはどんより曇った空を指した。雨は上がっている、が今にも泣き出しそうな、そんな天気だ。 「それで彼女は今どこに」 「一応、最凶悪犯用牢獄に収容しています」 ハミルトンはため息をつくとコーヒーを飲んだ。 「こちらの質問には自分のことのみ答えます。組織のことについては全く…。それに、全く何も口にしないのです」 弱り切った口調でハミルトンは言った。少女を案じているのがわかる。 沈黙が流れる。 口を開いたのはエドガーだった。 「会えるか?」 ハミルトンは頷くと席を立った。 「ご案内します」 詰め所に隣接してある牢獄。ひんやりとした空気が奥に進む二人を包む。 「ここです」 前隊長のエドガーでさえもあまり足を踏み入れたことのない最凶悪犯用の牢は最上階にあった。そこに近づくにつれ、エドガーは異様なほどのプレッシャーを感じていた。
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