その幕開け

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少女はいた。壁にもたれ座り、両足は前に投げ出されている。目は軽く閉じて俯いている。両手は前で手錠を掛けられ、両足にはそれぞれ球形の重りが付けられていた。 牢の前に2人が立つと彼女は目を開けた。前髪の透き間から覗くのは血を溶かしこんだような赤の瞳。 エドガーは背筋が凍るのを感じた。彼女から漏れ出ている絶大な力にではない。こちらを見ているようで、何も映してはいない。いや、もっと深い何かを見つめているような、その光のない瞳に。 彼は戦慄した。
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