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「あぁ。俺は篠崎だよ。」
「ひっ‥!悪かった、お前の知り合いだなんて知らなくてよ、」
「いいから、行けよ」
男は随分とこの篠崎要が怖いらしい。篠崎要の許可が降りた瞬間に脱兎のごとく逃げていった
「‥‥‥‥ぁ、ありがとう」
「‥‥おう」
ちょっとの沈黙の後にあたしがお礼を口にすれば、可愛らしく照れてくれた
すごい可愛い!!!
「お前、名前は」
照れたのが抜けないのか、赤い顔を少しあたしから顔を背けて彼はあたしの名前を聞いた
「‥‥‥‥」
知らない人には名前を教えちゃいけないし‥、偽名でも名乗るべきなのか‥‥?
「はやく」
「‥‥‥‥‥アリス。」
結局、本名を名乗ってしまった‥‥
でも、アリスは名前じゃないし。
有栖芽衣(ありす めい)それがあたしの名前
いままでの学生時代、みんなに芽衣ではなくアリスと呼ばれ続けた
一種のあだ名みたいなものに近い
「‥アリス、」
「ん?」
「‥‥おいで」
そう言って篠崎要はあたしに手を差し伸べた
え?
なに?
この手を掴めと?
「いや‥、えっと‥‥」
どう言って逃げよう
さすがに恩人に「止めてよ、変態!」なんて言う勇気もない
「アリス、行く当てがないだろ?」
兎みたいにくりくりな目があたしを捕えて離さない
だって、行く当てがないってのは全くその通りだったから
あたしには行く場所がない
親友は彼氏と同棲中だし、彼氏はいないし、今は夜中の1時だからもし行く当てがあったとしても泊めてなんて頼みにくい
「こんな時間に中学生がコンビニだなんて、家出しかないしな」
‥‥‥‥‥‥は?
ちゅ、う、が、く、せ、い?
「はぁ?」
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