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――…10分後。
くっ――何という事だ。
己の知識の薄さに項垂れる。
料理方面にも、手を伸ばしておくべきだったな……。薄力粉と強力粉と小麦粉の違いが分からん!!
そもそも、アレだ。3つに違いはあるのか? 匂いか? 小麦粉は麦の匂いがするのか?
「うむ、試してみるか」
粉に鼻を近づけようとした所で、ひとつの可能性に気づいた。
――まさか、麻薬かっ!?
俺を生徒会長の座から引きずり下ろそうと、何者かが――…その手には乗らんぞ!!
慌てて距離をとる。額に汗が浮かんだ。
生徒会長とは、学園を支配できる魅力的なポストだ。狙う者がいてもおかしくはない。
だが、相手が悪かったな。俺が生徒会長である限り、このポストは誰にも渡さん!!
白い粉を睨み付け、警戒してみる。
……結局これが何なのか分からんではないか。
「――あぁ、そうか。何も俺自らが答える必要はないな」
そう、他の奴にやらせればいい。
ニタリと笑った所で目についたのは、借り物競争の箱。その参加者リストに茶髪のショートカットの女がいた事を思い出す。
藤原きょう子。俺のおもちゃ――…
「くくっ――」
早速紙に『小麦粉か何かだ』を書いて、箱の中に入れておく。これで数日後には答えが導き出されるはずだ。
驚愕と怒りに身悶えるその姿を想像し、再び机上を見る。
まぁ、今はとりあえずゴミだな。
◇ ◇ ◇
白い粉は、城崎冬真の手によりゴミ箱の中へと消えていった。
実物がなければ、それが何なのか解しようも無いのだが――冬真はその事に気づかない。
数日後の体育祭に思いを馳せ、ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべ去って行った――…
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