小麦粉か何かだっ!! ~藤原きょう子の場合~

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   私の活躍の場を台無しにしてくれたこの怒りは、どうしてくれよう。  怒りに沸々と沸きかけていた私は、皆が此方を見てフリーズしている事に気づいた。  よくよく見れば、先頭の走者は中途半端な位置に止まって、私の方を見ている。  ――まだ、いけるっ!!  がしっ。と掴んだのは城崎の腕。逃げられないように、がっちりと組む。 「な、何をするっ!?」 「城崎冬真。『小麦粉か何かだ』の正体、分かったわよ」 「何だとっ!? この俺にも分からんものをお前があっさりと分かるわけ――」 「いいから黙って、付いてこいやああああぁぁっっ!!」  残りの距離を城崎を引きずりながら、全力疾走。  周りが呆気にとられている内に、いっきにゴールの白いテープを切った。  戸惑いながらも近づいて来る男子は、恐らく審判の体育委員だろう。  その体育委員にお題の紙を渡して、合否を待つ。 「え!? えーと、お題は『小麦粉か何かだ』という事で――」  チラリチラリと城崎に視線を向ける体育委員は、明らかに助けを求めていた。  コレって何ですか? 教えて下さいよ、会長!! 的な、意味合いの視線が送られている。でも、城崎は知らんぷり。 「――…何でしょう?」  結果的に、私に答えを求めて来た体育委員にニッコリ笑顔を向ける。 「小麦粉か、何かだ。って事で、コレ小麦粉以下」  ペチッと城崎の頭を叩いて差し出す。 「え? えーと……」 「小麦粉以下」 「貴様、この俺を捕まえといて小麦粉以下だとっ!? 俺は小麦粉以上だっ!!」 「え? 会長それでいいんですかっ!?」 「当然だっ!! お前は俺が小麦粉以下だと思うのかっ!?」  あぁ、やっぱり城崎は頭良いけど馬鹿だわ。馬鹿で良かった。             ◇ ◇ ◇  何だかんだで結局、きょう子が1位になり、障害物競争は無事に幕を閉じたのであった――…  
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