次男

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次男

わりと妻は、次男に肩入れしていた。 『おさがりばかりじゃ可哀想よ』と、大抵がこの類の庇い方。妻は次女なので、次男に感情移入していたのだろう。あまり度が過ぎた訳ではなかったので、僕もとやかくは言わなかった。可哀想と思うのは妻であって、次男はそう思ってはいないよ、なんて言ったりすれば、怒り出したに違いない。ただ、甘えた性格になりやしないかと心配だった。 そんなある日、次男がコンクリートの階段から落ちて怪我をした。なんと顔から落ちたのだという。僕は出張していたので、数日後にその話を聞いた。確かめると、眉毛のあたりに2針ほど縫ったあとがあった。男の子だし、まぁこんなことはあるものだ、と事後のせか冷静に聞くことができた。ただ、妻が言うには、泣かなかったらしい。怪我した時も、縫った時も涙は流さなかった、と。僕はこれを聞いて、この子はたくましく育つ、なよなよはしない、そう思った。しかし、『逆に心配よね』と妻が言った。それもそうかもしれない。今度は、泣けない性格になるのではないかと心配した。まったく、親バカな話である。だがこんな心配も後日無用になった。次男が悪さをしたので、僕が叱った。頭ごなしに叱ったわけではないが、普段よりはきつかったかもしれない。その時の次男は謝りはしたが、無反応だった。それから用事で僕が外へ出かけて行った後、次男は壁を向き正座して、無言で大粒の涙をポトンと流した、いや、妻の表現では落としたらしい。ちゃんと泣ける奴だ、けどポトンと落とす? 泣き方が・・・それはそれで気になる。
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