プロローグ

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2072/7/10~誘いの森・出口付近~ 耳朶を叩く自身の荒い息遣いが、どうにも煩くて堪らない。 口の中も喉も渇いてカラカラだ。 生い茂る木々の間を駆け抜けるその足は、そろそろ限界を訴えていた。 踏みしめようにも力が十分に伝わっていかず、思うような速度で走れなくなってきている。 今の自分には、圧倒的にスタミナが足りていない。 スタミナに関しては走るのを止めさえすれば、徐々に回復するのだが、今はそんな場合ではない。 スタミナの配分を間違えていたという見方もあるか。 チラリと視界の右上にあるステータスバーを確認する。 HP(体力値)は八割強。 SP(技術値)は全快。 しかし、満腹度ゲージは既に半分を下回り、残り三分の一に届こうかというところ。 満腹度ゲージが0%に近付くにつれて、筋力パラメータにマイナス補正が課せられ、物理攻撃値も比例するように下がる。 右手で指を鳴らし、ステータスウィンドウを開いてアイテムポーチウィンドウのタブにタッチして切り替える。 NPCからの依頼を受注してから、ポーチの中身はチェックして来た筈なのに、満腹度を回復させるアイテムは全く見当たらない。 「あ゛~……!ホントにヤバい!」 ぼやきながらも、速度を落とす事なく森の出口を目指す。 俺は後ろから近付く複数の気配に意識を向けつつ、冷や汗なのか運動による汗なのか分からないまま、振り向かず一心不乱に走るのだった。
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