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―――好きな、人…?
亜理砂達には時たまそういった話を聞かれるが正直、私は人を好きになる気持ちや好きになる時の気持ちが分からない。
そんなわけで大体想像はつくだろうが付き合ったことは勿論、告白したこともされたことも一度もない。
「えっと、居ないけど…?」
と何故か聞かれたのは私なのに逆に最後が疑問系になってしまった。
「本当に?」
門井君は先程まで寂しげに揺れていた瞳を大きくして、輝かせる。
「う、うん。でも何で…」
突然の変化に驚きながらも頷きどうしてそんなことを聞くのだろう?と疑問に思っていた事を口に出す。
「何でって、好きだから」
「…好き?」
好き?何が?と何の事なのか訳が分からず首を傾げた。次の瞬間、私は思いもよらない急な展開になる。
「―――花木さんのこと」
「……え…わた、し……?」
時が止まったような感覚に陥り思わず耳を疑う。
門井君が私のことを好き…?まさか、そんなわけがない。きっと何かの聞き間違いか彼が似ている誰かと私の名前を言い間違えたんだ。
「あの…えっと…花木さんってどんな子なの?」
確かめる為にと平然とした態度を装い門井君の好きな私と同じ名前の、「花木さん」がどんな人なのかと尋ねる。
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