38人が本棚に入れています
本棚に追加
……が、やはり信じがたい現実を女性なら十人中何人かは見惚れてしまいそうな、にこりとした笑顔を浮かべた門井君によって突き付けられる。
「花木さんって珍しいし、花木さん以外居ないと思うけど」
「で、でも…そんな!信じられないよ…」
好きだなんて言われたことがない。況してや異性になんて信じられるわけがなかった。
クラスや学年でも人気者でカッコイイ世間で言うイケメンの彼が、自分とは違う世界に住んでいいて釣り合わない筈の私を好きだなんてきっと、何かの間違いなんじゃないだろうか。
普通なら好きだと言われれば嬉しい筈なのだが……生まれてから一度も確かな恋愛をしたことがない私は、どうすれば良いのかさえ分からないのだ。
ここで信じられない、冗談だよね?と笑いながら返せば良いのかありがとう、と言えば良いのか何も分からない。
そうした感情や気持ちがぐるぐると渦巻き、今にでも不安に押し潰されそうになる。
「……ぁ…ご、めんなさい…ッ!」
そう言うと同時に私は彼に背を向けて一度も振り返る事なくその場を走り去ってしまった。
信じがたいが門井君が本気で気持ちを伝えてくれたなら失礼な事をしてしまった。
でも、もしもそれが軽い冗談や友達とやったゲームか何かの罰ゲームであんなことを言ったんじゃないのか、とどうしても思ってしまうのだ。
最初のコメントを投稿しよう!