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授業の内容なんて頭の中には既に無くて悶々としたまま過ごしていれば、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
時計を見るといつの間にかあれから30分も経っていたのだ。何時もならきちんと理解できた筈の数学の問題、今日は分からなかった。
分からないまま放って置くのは気が進まないのでこの後の昼休みにでも亜理砂に分からない部分を聞いてみることにする。
因みに、何故もうお昼前の今になって日直について気付いたのかというと……黒板は私が委員長なので消すことが役目で日課になっていた為、今日が日直だということに気が付かなかったのだ。
「……はぁ」
と幸せが逃げることすら気にする余裕もなくため息が溢れる。どうして、よりにもよって交わることのない私と彼が一緒になってしまったのだろう。
そんな私を他所に何時ものようにテンションの高い彼女……亜理砂がやって来た。
「麻結~!お昼食べよう」
人懐っこい笑みを浮かべ、ぷらぷらとウサギの可愛らしいイラストの風呂敷に包まれた弁当箱を揺らしながら。
「ん…あ。亜理砂…」
「ん?何か元気ないけど、どうしたの?」
「ちょっと…そうだ。さっきの数学教えて」
私がそう言うと亜理砂は珍しいと言いながらも良いよ、と快く引き受けてくれた。
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