第 1 話

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亜理砂の話で意見や気が合ったのは意外だった。亜理砂の言っていた通り、冷たく感じる見た目とは違い普通に話すことが出来た。 そして早いもので何時もは長く感じるお昼休みも、終わり目前を告げる予礼のチャイムが鳴り響く。 その音に図書館にある時計を見ると授業開始10分前になっていたのだった。 「あ…!戻らないと」 「あー、まじか」 と私に釣られて門井君もぼりぼりと頭を掻きながら気だるそうに時計を見上げる。 「あの、門井君は…?」 どうするんだろう?と意味を込めて門井君を見るとポケットから携帯を取り出し、何かを確認しだしたのだ。 少しの間待っていると門井君は俺はいい、と一緒に教室に戻ることを断られてしまった。 「そっか…あ。じゃあ、私そろそろ行」 行くね?と言おうとした直後、最後まで言い終わることなくそれは門井君によって遮られたのだ。 「―――待って」 といつの間にか何故か彼は近くに立って居てガシッと腕を掴まれていた。 「…え…あ、はい?」 「花木さんって好きな人とか居る?」 「へ…?好きな、人?」 「好きな人」 そう問い掛けてくる彼は何処か……例えるなら飼い主に捨てられそうになりその飼い主を見る瞳に似ている。 だけど寂しげに揺れる瞳とは違い表情は真面目で真っ直ぐ私を見ている。
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