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名前も顔も分からない誰かに教えてもらった。
人々は皆、天使だったけれど一番偉い神様が天使の象徴である翼を契り落として地上で生活するようにと言ったらしい。
こうやって今、人々は空も飛べずにいる。
「空を飛べたらどんなによかっただろう」って
思う人も少なからずいるはずだ。
だったら言ってごらん?
全ては神様の気まぐれだから。
そんな事を教えてもらって納得してしまった幼かったあの頃の私は今は何処にいるのだろう?
夢も希望もなくしてこの場所に立っているだけで何が楽しいと言えるのだろう?
嘯いた笑顔も言葉も私にはいらない。
厭世した私は空を飛んだ。
風が下の方から吹き上げてくるのが身をもってわかる。
ざわめく人の声が何故か嬉しい。
そう感じてしまったらもう最期だ。
激しい痛みとともに襲うのはやっとこの世界から消えることのできた嬉しさ。
ぬめりとした赤黒い私の中で流れていた液体を震える手で掬う。
霞む視界の向こう側で声がする。
白い、白い、白い、少女。
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