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幼い子もいれば年輩の人もいる。
皆が皆両手を組んで神に祈りを捧げている。
「こっちだ。」
黒い人に連れてかれて右へ曲がる。
明るい照明が目に痛い。
ソファーや机、肌触りがよさそうなカーペット。
黒い人が手をたたくとそれまで本を読んでいた人が顔をあげ談笑をしていた人が談笑をやめた。
「新しい家族だ。皆、仲良くするんだ。いいね?」
家族?仲良く?
理解できそうで出来ない単語。
自己紹介をするようにと促された気がしたけどそんなことができるはずがない。
死んでもこんな場所にいるのならもとの世界の方がよっぱどよかった。
私の腰辺りまでしかない幼い男の子が私の服をひっぱていることに気付いた。
そして今にも消えそうな声で私にむかってこう言ったのだ。
「お姉ちゃんは何をもっているの?」
私に持ち物なんてものはない。
「ないの?」
「あまり、質問ばかりしてはいけないよ。」
黒い人が男の子の頭を軽くなでるとその子は空気に溶け込むかのように消えてしまった。
本当に消えたのだ。
辺りを見回しても男の子は何処にもいない。
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