始発駅 「きっかけの出会い」

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―5月のゴールデンウイークのとある日。 雲一つない文句なしの晴天に恵まれたこの日、主人公・鉄 銀河はまるで幼い子供のように目をキラキラさせていた。彼の目の前に、純白の車体にオレンジのラインが映える小田急自慢のロマンスカー50000形VSEが、「スーパーはこね9号」として伝統のミュージックホーンを奏でながら新宿駅に滑り込んで来た。銀河は肩から提げていたショルダーバッグを漁ってスマートフォンを取り出すと、定位置にピタッと停車したばかりのVSEに狙いを定めて写真を数枚撮った。 彼の後ろでおとなしく見守るのは親友・大久保穂高。そのほかに、銀河と同じく目を輝かせてVSEを見つめているのが大澤船人、船人の横で密かにテンションを上げているのが暁伊三郎、その後ろで自慢のデジタル一眼レフで写真を撮っているのが宇都宮颯、日程表の様な書類に目を通しながら腕時計で時間を気にしているのが福岡みなみ、そして颯に負けじとデジタル一眼レフで激写しているのが白鷺はるか先生。 ・・・そう、彼らは全員、私立やまゆり中央学院付属やまゆり総合中学校の鉄道総合研究部の部員たちだ。白鷺先生自らも鉄道好きということで担当顧問になっているが、今では他の部員たちに混じってワイワイやっていて、真のまとめ役をみなみが務める有様だ。 そんな彼らは、これから目の前に停車している「スーパーはこね9号」に乗って箱根湯本を目指す。銀河はVSEに乗るのが初めてで、部員の中で一番気合いが入っていた。手早く写真を撮り終えると、胸に秘めていたワクワク感が弾けたようにぐるりと部員たちを見つめた。 「よし、じゃあ乗ろうぜ!!」
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