始発駅 「きっかけの出会い」

5/14
前へ
/44ページ
次へ
「よっ!!」 銀河が気さくに穂高に声を掛けた。すると穂高もすぐに銀河の顔を思い出したようで、軽く頭を下げた。 「確か俺と同じクラスの・・・」 「大久保穂高です。君は鉄銀河くんで、後ろの子は福岡みなみさんですよね?」 「その通り~。すごいね大久保くん、私はまだクラスメイトの名前と顔が一致してないって言うのに・・・」 「あはは。僕、そういう暗記はすぐ出来ちゃうんですよ~」 「ところでさ、大久保って確か電車好きだったよな? 今は何してたんだ?」 すると穂高は鞄から一冊のアルバムを取り出すと、その中の一枚を二人に見せた。その写真には、たった1編成しか製造されなかった幻の車両、東京メトロ06系が写っていた。 「その写真の電車、1本しか走っていなくてとっても貴重なんです」 「で、この電車がどうしたんだよ」 「さっきツイッターを見ていたら、ちょうどこの時間帯に千代田線から多摩急行で下ってくるという情報をゲットして、写真を撮りに来たんですよ」 銀河たちには、1編成しか存在しない06系の有り難みや、多摩急行といった単語がイマイチ分かっていなかった。しかし彼が、目を輝かせながら無知な彼らたちにも分かりやすく説明していた姿を見て、穂高が鉄道に賭けている確かな熱意だけは、二人にもしっかり伝わったようだ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加