俺、小林一茶✋ ⑱才‼

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昨夜早く寝床についたため、珍しく早起きした。 窓を開け目一杯の酸素を吸い込んでやった。 そのまま後ろへ倒れんばかりに背中を伸ばした。 『さ~て、愛車にワックスでもかけてやるか~。』 400㏄のCB-X改。 軽く水洗いをし、丁寧に水滴をふき取った後、ワックスを隅々まで手掛け。 そして、ムラになってないか四方八方様々な角度から光沢のチェック。 『な~にやってんだ~!?』   地べたに這い蹲り下斜め45°の角度からのチェックをしているところへプチオヤジが出勤してきた。   『あ、プッさん!おはよう!』 膝についた土を払っていると、すでにプチオヤジは単車にまたがっていた。 『キュルルッ!ブォブォブォブォ~ン!!』 朝の街並みに一瞬、マフラーが奏でる雷鳴音が轟いた。 『ぅ~ん。やっぱ最高だな!まだまだ乗りてぇなあ。』 プチオヤジはワックスでピカピカに磨き上げられたオイルタンクをポンポンッと叩いて、名残惜しむように資材倉庫へ今日の準備をしに歩いていった。 俺も同じ様にポンって叩いた後、今度は油差しと556でエンジン周りの掃除に係った。   『一茶ちゃん、おはよう。パパもう出ちゃったぁ?』 『あら、兎香ちゃんオハヨッ。まだ倉庫の方にいるよ。』 ベビーカーを押してプチオヤジが忘れていったお弁当の入ったデイバックを届けにきたのだった。 『凌太朗~!おはよー、また日に日にプッさんに似ていってるね~!!』 『ごるぁ~!!一茶!汚い手で触るんじゃねーぞ!』 プチオヤジが裏の倉庫の方から叫びながら戻ってきた。 『はぁぃパパでちゅよ~。お弁当持ってきてくれたんでちゅね~。』 そう言いながら自分もすでに埃っぽい手でもうすぐ一歳の我が子を赤ちゃん言葉でかまっていた。 『キモっ!!』 『馬鹿野郎!お前もいつかわかるぞ俺の気持ちが!せいぜい今のうち、守るべき物がない間におもっきりバカやってろ!ね~遼クン。』   『お兄ちゃん何してんの?私もう行くよー。遅れても知らないからねー!』 裏口から出てきた妹のAyaがややあきれた口調で時間を知らせた。   『やべっ!!』 『ハハッ。もう一回二年生やっとくか一茶!?』 『兎香ちゃん、凌くんまたねっ!』 そう言ってベビーカーに軽く手を振った俺は慌てて家に駆け込んだ。 入口横では駆け込んだ俺について来ようと飛び出したロナが鎖で繋がれているのを忘れて、バビ―ンッてなって咳き込んでいた。
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