俺、小林一茶✋ ⑱才‼

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プッシュ~   閉まりそうな電車にギリギリで駆け込んだ。 息も切れ切れで入口横のバーをもたれるように掴んだ。 ふと見ると、先に出たAyaもちょうど同じ車両に座っていた。 『おいおい妹よ。気付いてたなら、もう五分程前に声かけて欲しかったぞ~。』 『何言ってんの!女の子の朝は忙しいの!それより恥ずかしいから違う車両行ってよ!!』 はいはいと、隣の車両に行きかけた時、ふいに激しく柑橘系の香りが鼻をついた。 Ayaの斜め前に濃紺のタイトミニのスーツに肩からアズールのショルダーを掛けた一人の女性が目に飛び込んだ。 見るからに水商売の朝帰りと言ったところだろう。 頭もトップは逆毛を鬼盛り、肩から下のエクステは髪の毛一本の乱れもなく綺麗に揃い巻かれていた。 その巻髪の間、オープンに広がった胸元に視線が止まる。 透き通るような真っ白い首筋になんと虫にでも刺されたような赤みが…。 Ayaも気付いたらしく恥ずかしそうな笑みを俺に投げかけた。 『ぅ~ん、間違いなくキスマークだにゃ。』 ガン見の俺の爪先をAyaが軽く蹴っ飛ばした。   『そう言えばお兄ちゃん知ってる?この街で最近噂の都市伝説!』 『都市伝説!?そりぁまた大袈裟だな。』 『それがすっごく怖いんだってぇ!ヴァンパイアって知ってる!?綺麗な女の人だけを狙うの!そんでヴァンパイアを真似て最後に首筋を噛みちぎるの!もう何人も被害が出てるんだから~!!』 『そりゃずいぶん味な変態野郎だな。ま、お前はまだガキだから安心か!』 そう言い残して、俺は隣の車両に移った。 入口の扉に寄り、車窓から外の景色をボーっと眺めて過ごした。 もう暦の上では秋だと言うのに、遠くに映る工場地帯が蜃気楼で揺らめいていた。 今年の夏の異常気象、残暑はまだまだ続きそうだ。
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