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「翔、私はもう大丈夫。だから離して。葵に連絡して、拓己君を捜しに行かなくちゃ」
「明日香……」
拓己がマンションを飛び出したあと、翔の声はいつもの穏やかさを取り戻していた。
「ちょっと驚いただけだから。ね?」
翔の顔を見上げて、明日香が微笑む。
「悪かったよ……。油断していた俺が悪いんだ。もっと早く手を打つべきだった。でも……無事で良かった。でなきゃ――」
翔は明日香の髪を撫でると、もう一度強く抱き締めた。
「でなきゃ、俺は拓己を殺していたかもしれない」
「翔、そんな恐ろしい事言わないで」
「判ってる。拓己が悪いんじゃない。でも、もう少しで感情を抑えられなくなるところだった」
「翔……」
静かに近付いた唇が重なる。
いたわるような優しい口づけが、明日香の心までも包み込む。
癒して行く。
何度か唇を重ね……再び翔が明日香を胸に抱き締めた時、携帯電話が鳴った。
『どうした?翔。たった今、葵君の所に拓己君から連絡があった。何があったんだ?』
声の主は飛鷹だった。
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