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忘れよう。全部忘れて、新しい生活を……。
壁の掛け時計を見ると針は午前8時半を指していた。
「やべっ……遅刻しちまう!」
俺はあわてて洗面所に向かう。歯を磨き、顔を洗う。そして水を止め、鏡を見た。映っているのは髪を赤く染めた自分の顔。誰にも知られていない過去を捨て新しい一歩を踏み出そうとしている自分の顔だ。
赤い髪でも働ける職場を探すのには苦労しなかった。都市部にはまだ建設中のビルがちらほらあって、道路やその他都市として必要なものが次々と造られているからだ。
俺が働くことになったのはそんなに高くもないビルの建設現場。給料は高くはないが低すぎもしない。
午前8時45分
半ばドアを蹴破るように俺は出勤した。
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