第20章

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由梨は、ただ静かに相打ちを打ちながら、私の話を聞いてくれている。 疑うでもなく、驚くでもなく。 ただ真剣に話を聞いて、頭の中で整理をしているようだった。 「茅奈…。自分が死んでもいいと思えるくらいに、沖田さんが好きだったんだね」 全てを話終えると、由梨はどこか羨ましそうにそう言う。 由梨の言葉に、私は無意識に目を伏せた。 「…そう、だね。……あの頃の私は、まだ子供で…それが恋愛感情って言うことにすら気づけなかったけど」 「あんたが恋出来なかったのは、忘れてしまっていても…心のどこか深い所に、沖田さんが居続けてたからだったのかもね」 「……でも」 静かに、再び私の頬を涙が伝う。 「もう、居ない。この世界のどこにも…。もう、何も伝えられない」 今更恋心に気づいたって、もう遅い。 あの時、あの瞬間に、彼に伝えられなかった。 それはもう一生この気持ちを伝えられないということ。 もう二度と会うことは無い。 恋心に気づいた瞬間に、失恋をしたような気持ちになる。 「沖田さん…、茅奈を探してたのかな」 「…え?」 「昨日の番組で、言ってたじゃん」 この女性と幸せになれと、この女性を探し出す命を与えたとーーー 昨日のテレビの人達が言っていた考察が頭を過る。 「それは、無いと思う」 やんわりと否定する私に、由梨は不思議そうな顔をしている。 「だって、沖田さんが戦いに行くことを止めさせようとした時、殴られそうになったんだよ?」 沖田さんがどれ程までに、幕府のため、大切な人のために戦いたいと思っていた事、よく知ってる。 だからこそ、私なんかのために戦うことは止めないって、そう思ったんだ。 「そんなに…戦闘狂だったの?」 唖然とした様子で言う由梨に、私は緩く首を振った。 「違うよ」 戦闘狂なんかじゃない。 沖田さんは、人を殺したいだなんて思う人じゃない。 優しさを、持っている人だから。
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