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天音の予想外の病に、俺たちは言葉を失った。
声に、寿命、だと?
そんな病聞いたこともねえぞ
年々出にくくなって行くって…そんなん…
「あ、でも、そんなに…重い病では、ないんです」
だから、大丈夫。そう言って、痛々しく微笑む天音に、結局俺たちは気の利いた言葉を掛けてやることはできなかった。
* * * * *
「総司はどうせ、なんも知らねえで言ってんだろうけどな…」
俺の言葉に、近藤さんはははっと乾いた笑い声をあげる。
「いつまでたっても、子供だな。あいつは」
近藤さんはくいっと酒を飲み干すと、お猪口に酒をつぎながら語り出す。
「…ツライ思いをしているのは決して茅奈殿だけじゃないさ」
近藤さんの瞳の中で、炎がゆらゆらと揺れた。
「どうゆうことだ?」
「…誰だってそうさ。昔の自分そっくりの人間を見れば辛くなるし、その当時を思い出しやすくなる」
「その当時…を…」
ああ、そうか。
あの頃の総司は………
今のことだけを考えて、総司の事を何も見れていなかった自分に嫌気がさす。
大きな溜息をつくと、それはすべて煙管の煙へと変わった。
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