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その笑顔には、例えるとすれば母親に置いて行かれた子供のような…
捨てられたノラ猫のような
そんな寂しさが含まれていた。
自分の感情にここまで正直でいる彼は、なにをそんなに必死に笑顔で隠そうとしているのだろうか。
放っておいたら崩れ落ちそうで…
私は彼の体を小さな手で包み込んだ。
「なに…してんの、おまえ」
沖田さんの問いかけには、首を左右に振って答えた。
だって、沖田さんは私とは違うでしょう?
あんなにたくさんの人に愛されて、必要とされて…
だから、そんな顔をして笑ってはダメ。
「どうして…そんな、笑い方をするんですか」
沖田さんは、私なんかと同じなはずない。
「私のこと…嫌いで、良いです。だけど……だけど」
「ぃい加減にしろっ!」
無理やり沖田さんに引き剥がされて、私は真正面から彼を見つめることになる。
薄めた瞳から、次から次へと涙が溢れる。
そんな私を見て、やっぱり彼は、目を見開いた。
「そんな笑い方…やめてください。……皆さんが、悲しみます」
目を見開き、私を見つめたままの彼を置き去りにして、私は走って部屋へと戻った。
そして、倒れこむようにして布団に寝転んだ。
こんなに涙が溢れるのは、どうしてだろう。
どうしてこんなに悲しくて…
どうしてこんなにさみしいの…
沖田さんの悲しそうな笑顔が、脳裏に焼き付いて離れないよ…
彼は、ずっとずっと
あんな風に笑って生きてきたの…?
こんなに、他人を自分の身近に感じたのは、初めてだった
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