第4章

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心配そうな平助くんの言葉に、私は首を左右に振った。 「いいの」 目が合えば睨まれて、言葉を発せば顔を背けられて。 一見したらいじわるな態度をとっている沖田さんだけれど… 私は、その瞳の奥にある本当の気持ちが知りたいと、思ってしまった。 そんなことを言ったら、馬鹿だと笑われるかもしれない。 だけど私は、完璧そうに見えて全然完璧じゃない彼に、少なからず惹かれているのかもしれない。 「なあ、茅奈」 覗き込んでくる平助君の顔を見つめる。 犬のようにまん丸な彼の瞳に、私の目が捉えられる。 「なんかお前、少し元気になったな!」 「げん…き?」 「ああ!最近顔色もいいし、飯も少しは食べるようになったしな」 にこにこ嬉しそうに話してくれる平助くん。 「そう、かなあ」 そうだったら嬉しい。 ああ、だめだ。 最近、私は自惚れることが多くなった。 治る見込みのない病。 戻る事のない声。 なのに、私はここにいると、病が治ることを夢見てしまう。 希望のない夢を、描いてしまう。 「まあ、でも無理はすんなよ」 ぽんぽんと頭を撫でてくれる平助くんに、私は微笑みを返した。 私はなんで病人なの…? 病人じゃなければ、こんなに気を遣わせる事もなかっただろうに ここに来てから、たくさん自分の考えが変わった。 それは、自覚している。 それがいい方向に変わっているのかは、分からないけど。 「天音」 ご飯を食べ終わり、席を立とうとすると、土方さんに呼び止められた。
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