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しかし、皆が寝静まった後から頼まれるその仕事に、人の良い近藤が気づくことはなかった。
自分の意見もまともに主張できない総司に、義母の嫌がらせはどんどんグレードアップしていく。
「いただきまーーー」
ガシャンっっ
今まさに食べ始めようとした御膳を義母によって倒され、総司は目を見張った。
義母の方へ目を向けると、今にも襲い掛かってきそうな勢いの殺気。
「なんで溢すんだい!!あんたは何をするにしても仕事を増やす!!」
夜は寝れず、昼間は稽古と外の掃除。食事はまともに与えられない。
どうして自分ばかりがこんな目に合うのか…
その日総司は、初めて大きな声を上げて泣き喚いた。
総司が試衛館に来て、およそ3ヶ月経った日のことだった。
後々考えれば、こんな境遇の中、よく3か月もがんばれた!と褒め称えたいところである。
その泣き声に導かれ、近藤が総司の部屋へとやってくる。
「義母さん!!!なにしてるんだ!」
「何って…しつけさ!しつけ!」
ケロっとした様子の義母に、近藤はワナワナと怒りを覚える。
泣き喚き、今にも壊れそうな総司をギュッと抱きしめる。
手にはあかぎれができ、所々から血が流れ、首や腕などに叩かれたような跡が見えた。
こんなに小さな子に、どうしてそんなに酷いことができるのかと、近藤は不思議に思う。
「宗次郎……ごめんな。気づくのが遅くなって…ごめんな」
* * * * *
「まあ、俺はその後総司にも説教たれたがな」
土方さんの無情な言葉に、私は目を見張った。
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