第4章

5/27
前へ
/453ページ
次へ
しかし、皆が寝静まった後から頼まれるその仕事に、人の良い近藤が気づくことはなかった。 自分の意見もまともに主張できない総司に、義母の嫌がらせはどんどんグレードアップしていく。 「いただきまーーー」 ガシャンっっ 今まさに食べ始めようとした御膳を義母によって倒され、総司は目を見張った。 義母の方へ目を向けると、今にも襲い掛かってきそうな勢いの殺気。 「なんで溢すんだい!!あんたは何をするにしても仕事を増やす!!」 夜は寝れず、昼間は稽古と外の掃除。食事はまともに与えられない。 どうして自分ばかりがこんな目に合うのか… その日総司は、初めて大きな声を上げて泣き喚いた。 総司が試衛館に来て、およそ3ヶ月経った日のことだった。 後々考えれば、こんな境遇の中、よく3か月もがんばれた!と褒め称えたいところである。 その泣き声に導かれ、近藤が総司の部屋へとやってくる。 「義母さん!!!なにしてるんだ!」 「何って…しつけさ!しつけ!」 ケロっとした様子の義母に、近藤はワナワナと怒りを覚える。 泣き喚き、今にも壊れそうな総司をギュッと抱きしめる。 手にはあかぎれができ、所々から血が流れ、首や腕などに叩かれたような跡が見えた。 こんなに小さな子に、どうしてそんなに酷いことができるのかと、近藤は不思議に思う。 「宗次郎……ごめんな。気づくのが遅くなって…ごめんな」 * * * * * 「まあ、俺はその後総司にも説教たれたがな」 土方さんの無情な言葉に、私は目を見張った。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1861人が本棚に入れています
本棚に追加