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だけど…なんでそんなことを
前に茅奈が倒れた時、まっさきに茅奈の事部屋まで運んだくせに…
それに、今回だって…
茅奈を部屋に運んだのは、俺じゃない。
総司だ。
バツが悪そうな総司の顔に、俺は何も言うことができなかった。
それに、土方さんの話も、俺の中で引っかかるところがあった。
昔の自分に似ている人を見ると…ってやつ。
だってそんなこと言ったって…
茅奈は病気なんだろ…?
あの時初めて土方さんの口から聞いた茅奈の病状に…俺は言葉を失った。
声を失っていく病なんて、聞いたことがなかったから。
声を出すことさえも苦痛であるだろうに…
総司に声の事であんなにも文句を言われて、彼女は大丈夫なのだろうか…
まあ、そんなことを黙々考えていて仕方ないしな…
俺は意を決して、目の前の襖をトントンと二回叩いた。
中から声が帰ってくる前に襖を開き、中にいる人物を目に捉えた。
「茅奈…目、覚めたぞ」
そうゆうと、総司は本当に本当に少しだけ、表情を和らげた気がした。
襖を後ろ手で閉め、総司の前に腰を下ろした。
「あっそ。…どうでもいいけどな」
俺には決して視線を合わせずに、総司はそう吐き捨てる。あぐらをかいて、その膝に肘をつきその手で自らの顔を支えている。
その表情の殆どは、確認できない。
「総司」
名前を呼んだとしても、彼の瞳は俺を捉えなかった。
「お前だろ…?茅奈のこと、殴ったの」
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