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俺の握った拳が、わなわなと怒りに震えた。
ガッと総司の胸元を掴むと、総司は静かに俺を見上げた。
正面から見た総司の目は、なんとも言えない感情を纏っていて、俺には理解するのは難しかった。
「悪いかよ!!!甘えちゃ悪りぃのかよ!!お前は!何も知らないんだろ!?茅奈の病気の事も!!あいつの苦しみも!」
ハァッハアッと息を整えながらも、総司を睨みつける。
総司は顔を俯かせていて、表情は確かめられなかった。
「知らねぇよ」
ポソっと呟かれた総司の言葉に、俺は胸元を掴む力を少し弱めた。
それ以上、総司が言葉を発することはなかった。
俺は、ズルズルとその場にへたり込んでしまう。
勝手に目から涙が溢れ出す。
どうしてかわからない。
どうして俺はこんなにも必死に、彼女を守ろうとしているのか…
だけど、ほっとけないんだ。
少し傷ついたらそのまま崩れて無くなってしまいそうな彼女を…
ほっとくなんて、俺にはできなかったんだ。
「あいつ…喉の病気…なんだと」
ズッと鼻水を啜りながら、静かに語り始める。
服の袖で溢れる涙を拭う。
それでも、人の気も知らずに、大粒の涙は俺の頬を伝っていく。
「どんどん声が出しにくくなっていって…最後には……」
俯いた俺の目に、総司の顔は映らない。
彼が悲しんでいるのか…
はたまただからなんだ、と踏ん反り返っているのか…
俺には分からない。
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