1861人が本棚に入れています
本棚に追加
思えば、私を病人と分かっていてあんなに邪険に扱ってきたのは沖田さんが初めてだったかもしれない。
みんな、腫れ物に触るように私を扱っていたから。
ああ、でも、お母さんは違っていたっけ。
思い出したくもないけれど。
ああ、もう考えるのはよそう。
普段使わない頭を使ったから、眠たくなってきた。
ズキンズキン、鼓動に合わせて左頬が痛む。
「……ごめん…な。茅奈」
温かい手…
優しい声…
これは、夢??
げん…じつ???
誰だろう…
今の温かい手は…
うっすら目を開けると、もう夕日のオレンジの光が部屋に差し込んできていた。
キョロキョロと辺りを見渡すけど、部屋の中に人の気配は無かった。
やっぱり、夢かな…
そう思い、横になっていた体を起き上がらせる。
すると、ポトッと畳に何かが落ちた。
「???」
何かと思って手に取れば、それはヒンヤリと冷えた手拭いだった。
夢…じゃ、ない??
少し痛みの引いた左頬は、その手拭いの余韻で冷えていた。
じゃあさっきのは誰だったんだろう。
……平助くん、かなあ
「茅奈~夕食の時間だぞ」
噂をすれば、なんとやら。
トントンと障子を叩く平助くんに、私は体をピクリと反応させる。
「は、はーい」
小さく返事をして、障子へと駆け寄った。
「へ、平助くん…。これ…ありがとう。おかげで少し…痛み…引いた」
最初のコメントを投稿しよう!