第4章

16/27
前へ
/453ページ
次へ
にっこり笑って手拭いを返すと、平助くんはなんだか呆れたような顔をしていた。 「いいえ。じゃ、これは俺から返しとくな」 私から受け取った手拭いを、ヒラヒラさせながら平助くんは大広間へ向かっていく。 「…へ?」 先に歩き出した平助くんに遅れをとらないよう、早歩きで彼の横に並ぶ。 「ねえ、平助くんっ」 そう声をかけても、彼は聞こえないふりで鼻歌を歌っている。 「~~~~。もう…」 いじけている私なんて御構い無しに、平助くんは大広間に入って行ってしまった。 変なの~。 大広間への敷居を跨ぐ寸前、誰かからの視線を感じ、不意にそちらに顔を向かせる。 だけど、私は即座に平助くんへと視線を戻した。 おおおおお、沖田さんが… みみみみ見てる。 いつもシカトで私なんか眼中にも入れる気ないくせに! なんだか、慣れないことをされると緊張するもので… 私はカチコチになりながら、平助くんの隣に腰を下ろした。 …んだけど… 食べ始めてからも食べてる最中も、沖田さんの視線はずっと私に向いている。 …なんだと言うのか。 私は直ぐにでもその場を立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。 しかし、私なんかよりたべるのが早い沖田さんは私が座ってから10分程で席を立った。 彼の膳はほぼ空になっていた。 「総司っ!」 私たちの前を通って大広間を出ようとする沖田さんを、平助くんが引き止める。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1861人が本棚に入れています
本棚に追加