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私は何故だかとても気まずい気がして、顔をしっかりうつむかせた。
ご飯を食べてる振りをして。
「ほらよ、これ、返しとくぜ」
そう言って、平助くんが何かを投げた気配がした。
何…投げたんだろう。
私は気まずさよりも好奇心が勝って、チラッと沖田さんの手元を見る。
そこには、さっき私が平助くんに返したはずの手拭いが。
「…んでてめぇが……」
「そんなの、わかんだろ?」
低くドスの効いた沖田さんの声と、おちゃらけた平助くんの声。
なんだか可笑しな会話だ。
沖田さんはしばらくそこに立ち尽くしてから、はぁとため息をつけながら今度こそ大広間を後にした。
だけど平助くん…どうしてあの手拭いを…??
「平助くん」
もう一度声をかければ、平助くんは「ん?」と短いながら返事をしてくれた。
「あの手ぬぐい…」
「あ~…。持ち主に返しただけ」
……え??
平助くんの言葉を聞いて、私は目を見張った。
あの手ぬぐいが、沖田さんの物…??
ということは…?
「え…と…。よく…分かんない…」
戸惑う私に対し、平助くんはふっと鼻で笑った。
「まー、そうゆうこと!お礼ならあいつに言ってやれよ」
ニカッと笑って言う平助くん。
そして彼はそのまま大広間を出て行ってしまった。
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