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「…悪かった」
視線は右斜め下に下ろしたままで、彼はそう、吐き捨てた。
彼の素直な言葉に初めて触れた私は「へっ?」なんていう、素っ頓狂な声を上げてしまった。
そんな私の顔をチラッと見て、再び視線を斜め下へと落とす。
そんな彼の行動を半ば観察しながら、彼の言葉を待った。
「お前の病…のこと、何も知らねえで…色々嫌なこと言っちまって…」
いつもの沖田さんからは想像もつかないほどに小さな彼の声。
だけど、ボソボソと小さな声で彼は尚も話し続けた。
「お前の言う通りだよ。…怖かったんだお前を見てんのが」
穏やかな口調で語りかける沖田さん。
私は彼の瞳を真っ直ぐに見つめて、その言葉を待った。
「だから、お前の事情なんてなんも気にしねえで、八つ当たり、した……」
バツの悪そうな彼の表情に、反省の色が含まれている。
彼の、申し訳ない、という気持ちをひしひしと感じる。
「本当に…悪かった」
ペコっと頭を下げる沖田さんに、少し狼狽えてしまった。
けれど、私は無意識に、彼の顔を両手で包んでいた。
ふわりと強制することなく、彼の顔を上げさせる。
「もう…やめてください。…大丈夫、ですから」
薄く笑みをうかべながら言えば、沖田さんは何故か目を見開いた。
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