第4章

27/27
前へ
/453ページ
次へ
だって、あんなにあんなに悲しい顔をしていたから。 「あなたも、傷ついて、いたのではありませんか…?」 語りかける私に、沖田さんはキョトンとしていた。 きっと自分でも気付いていなかったんだと思う。 だけど、人を傷つけて、自分は傷つかないでいられるほど、この人は…冷たい人間ではないんだ。 やがて沖田さんは、やっと私の言葉の意味を理解したのか、その大きな手で自分の顔を覆った。 ゴツゴツした男らしい手に、一瞬目が行く。 「もーおまえ…なんなの、まじで」 なんだかか細い彼の声に今度は私がキョトンとしてしまう。 だけど、全く敵意の篭っていない声色に、ほっと息をついたのだ。 「おまえ、ほんと…変わってるよ」 「…そうでしょうか」 不思議そうに呟いた私に、沖田さんは綺麗に微笑んでくれた。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1861人が本棚に入れています
本棚に追加