矢野の許婚

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しかし女は千田を察してか、矢野の写真を取り出し、千田に見せた。 「彼の最期は聞いています。部下に借りていた飛行機を落とす事なく、着陸させたと・・・最期の時まで操縦桿を握っていたと、部下の一人が伝えてくれました」 愛する人を失った思いを沈痛な表情で語る女を見て、千田は心が痛む気持ちになった。矢野も戦争が無ければ、青春を謳歌出来たかもしれないし、側にいる愛する人と結ばれたはずだった。そう思うと無念を遺して散って逝った若い矢野の思いを真摯に受け止めていた。
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