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春が過ぎ、この私──日之枝幸代<ユキシロ>は二年生になりました。一年生が入学し、仮入部が始まりました。
六月中旬、一年生はたった一人しか入らず、部活の活気も薄くなった。部活には気まずい空気が流れていた。
「………………」
道場に入ると、あまりにも嫌な光景を見てしまった。これは史上最大のピンチとも言える、状況だった。
私は先生に呼び出され、二十分遅れでここに来たのだ。
「こんにちは、先輩」
ヒョロとした体型に弱々しい表情をした後輩。弓道着があまりにも似合いすぎる。
私は一瞬後輩が可哀そうに見えたが、それどころじゃない。それは…それは───
「なんで二年が誰もいないのよーー!!」
そう、弓道場には一年生以外誰一人もいないのだった。普通だったらもう部活が始まる時間なのに、誰もいないのは異常過ぎだ。
──…頭が痛くなりそうだ。
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