Prologue

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吹き付ける夜風が、気持ちいい。 遮るものが何もない世界は、少しだけクリアに見えた。 ぼくは今、中学校の屋上にいる。 「………きれい」 上には夜空に瞬く、星が。 真っ直ぐみつめれば、『生きている』証、ビルやネオンの明かりが。 ―――下には、何もない暗闇が。 「………よっと」 ぼくは何気なく、手摺りを飛び越えて屋上のふちぎりぎりまで歩いた。 あと一歩足を踏み出すと、真っ逆さまだ。 フツウのヒトなら、きっと危なくて、フツウなら立ち入らない場所。 でも、これからぼくがやろうとしていることは、なんのことはない、ただの飛び降り自殺だから、何の問題もない。 何故なら、飛び降り自殺には、高さと危険を兼ね備えた場所が、必要だから。 さて。 ざれ言も、そろそろ、終わりにしよう。 「さよなら、ぼく」 ぼくは、足を踏み出した。  
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