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誰に尋ねるでもなく、ウィスプは急に話し出した。
「殆どのモンスターはその生を全うするけど、稀に二つの魂を合わせて新たに一つの姿に変化する事が出来るモンスターもいる。その事を召喚士達の間ではそう呼んでいるんだ」
「…、………」
「私は進化合成出来るモンスターの一人だ。………君もそうだろう?」
核心を突くように、ウィスプはそう言った。
俺は何も答えなかったが、どうやらヤツには顔色で分かったようだった。
「相手は?」
「………分からない」
「そうか。…私は『本当に』分からない」
「…お前、」
「君は分からないフリをしているだけだ」
根拠のない自信はどこから湧いてくるのだろう、ウィスプにはまるで俺の心が読まれていた。
「一つの姿になるという事は、二つの魂は消えて亡くなる………そう思っているから見て見ぬフリをしているのだろう?だがそれは誤信だ」
「………」
「確かに君のその体は無くなるだろうが、君自身は消えない。生まれ変わるだけだ。相手と共に、一つの中に共有する」
生まれ変わる。
ウィスプはそう言った。
だが、本当にそうだろうか。
例えそうだとしても、生まれ変わればもう俺は俺ではなくなっている。
…結局はもう生を全うしていないのだ。
―数日前。
主から個別で喚ばれて会いに行った瞬間、いきなり進化合成してみないかと言われた。
今まで主力として仕わされた身。
戦闘で、体力不足で何度も倒れる俺を決して見捨てたりはしなかった。
…他の仲間達より少しばかり気に入られた方だったろう。
そんな主に対して断る事も出来なかったが、…肯定も出来なかった。
最終的には、自分が一番可愛いのだ。
恩を仇で返すような俺を、主はきっと快く思ってはいないだろう。
…自業自得とは言え、良心が痛んだ。
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