進化合成1

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その夜。 喚ばれた俺は、フロア内にいるスライムを人気の無い所へ連れ出した。 「スライム、俺と進化合成しよう」 単刀直入に言った。 子供っぽい幼さがあるものの、本当はコイツもきっと分かっていたはずだ。 「もう俺もお前も成長限界まで強くなった。だが上には上がいる。…だから」 自分が消えるのが怖くないと言えば嘘だ。 だけど最後にもう一度だけ。 「…控えとしてではなく、もう一度正面から主と向き合いたい、一緒に戦いたいんだ」 生まれ変わればその機会もあるのなら、俺も本望だ。 「ここまで強くしてくれた主に、恩返しをしよう」 スライムは涙を溢れさせながら、しっかり頷いた。 主と向き合い、スライムと共に魔法陣の前に立つ。 主と仲間達に見守られながら、俺とスライムは魔法陣の中へ入った。 身体が眩い光に包まれる。 もう仲間達の姿も声も聞こえない。 最後に感じたのは、右手に繋がれた柔らかい手の感触だった。 少しずつ感覚が広がっていく。 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。俺は左手に鎌を持ち、フードが付いたローブを纏っていた。 ―スケルトン・ウォーリア。 名前を呼ばれて、どこか親近感を覚えた。 遥か昔、そう呼ばれたような、そんな記憶が片隅にあった。 俺はゆっくりと顔を上げ、主を見やった。 タワー祭が終わり次第、主力として主の冒険のお供に仕える。 初めての事なのに、俺は高揚としていた。 視界の中で、じっと見つめるヤツがいる。 俺はそちらに向かった。 「C・ウィル・オ・ウィスプだな」 自然に口から零れた、しかし決して不快じゃない。 ウィスプは暫し目を瞬かせ、微笑した。 「うん、そうだよ。ウォーリア、って呼んで良いかな?」 「いや、『今までと同じ』で構わない」 「えっ?」 ああ、この記憶はもしかしたら。 「………お前の言う通りだったな。ありがとう」 「スケルトン、君ってヤツは。…いや、何でもないよ」 満足気な俺の顔を見て、ウィスプも嬉しそうに笑った。
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