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「やあ麗しの君。ご機嫌いかがかな?」
ペガサスが召喚されて数日後。
一応顔合わせはしたものの、相変わらずのペガサス独特の挨拶にウィスプは思わず笑った。
「ペガサス、君はユニークだね」
「ははは、それは照れてしまうな」
「誉めてはいないんだけど…まあ良いか」
ウィスプはペガサスに慣れていなかった。
だが毎日といって良いほど何故か自分の傍に寄ってくるので、蔑ろにも出来ないのだ。
そして困った事がもう一つ。
「麗しの。何事も自由気ままにするのが肝心さ。放っていれば何とかなる」
一日に一回は言っているこの言葉。
自由奔放、適当といったものは確かに大切だが、何事もという訳ではない。
何の意味があるのか分からないが、ペガサスは基本的に自由だった。
「そうだ。今から君だけに見せたいとっておきの場所があるんだ。一緒に来てくれるかい?」
甲斐甲斐しく片手を胸に当て、もう片方の手を差し伸べる。
「…ああ、良いよ」
エスコートされる姫君よろしく、ウィスプは困ったように笑ってその手を取った。
着いた先は大草原―――二人の故郷だ。
ペガサスその広大な草原の奥の、小さな花畑に連れて行ってくれた。
「此処はボクのお気に入りの場所でね。リラックスしたい時や修行には持ってこいなんだ」
「へぇ、良いところだね」
ウィスプは早速、花を優しく掻き分けて、そっと寝転がった。
優しい花の香りに包まれて、時おり風が頬を擽る。
ペガサスを見上げると、腰に装備していた矢の束から一本を取り出し、長弓を構えた。
―いつもの飄々した顔から一変、凛とした真剣な顔で、弓矢を構える。
標的の握り拳ほどの大きさの石を狙い、ギリギリ…と張り詰めた弓。
手が離れ、高い風鳴りに眉根をしかめた直後、見事石の中心に突き刺さった。
「……、…」
思わず息を飲んで目を見張っていると、強くもあり優しい光を持つ瞳に微笑まれた。
―まるでナイトのようだった。
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