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全ては数時間前の下校時から始まった。
「それでね、数学の西北先生がね、来週テストするって……」
「……そう」
「翼君は自身ある?私は微妙なんだよね……」
「……うん」
正直返す言葉が見つからなかった。曖昧な返事に少し落ち込みがちな隣を歩く少女、黒木鈴は笑顔だけは絶やす事を止めない。
だが俺も好きでこんな態度をとる訳ではなかった。
笑うことを忘れたんだ。
春に事故で両親を失って以来、何故か俺の笑顔は消えた。それ以来皆俺から離れていく。こんな無精な奴だからだとは解っている。
しかし鈴は違った……彼女だけは依然と変わらず俺に接してくれるのだ。
だけど……鈴に対して何かを返す余裕が生まれない。
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